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メールマガジン2017年冬号「地域におけるMICE 〜マーケティングの視点を〜」(2017/02/10)
地域におけるMICE 〜マーケティングの視点を〜
主任研究員 木村 孝史

交流人口の増加を目指す日本版DMOとMICE
2016年の訪日外国人数は、10月末に初めて2,000万人を突破し、年間推計で過去最高の2,403万人となった。観光客の指向がモノからコトへシフトする中、インバウンド需要をとりこみ、観光を核として地方創生を推進する日本版DMOの形成・確立をめざす地域が増えている。観光庁によると、広域連携DMO 4件、地域連携DMO 56件、地域DMO 63件と、多くの法人が登録されている(2017年1月20日現在)。
DMO形成の目的としては、データの収集・分析、地域の多様な関係者の連携、KPI設定とPDCAサイクルの確立、地域のブランド力向上などがある。取組にあたっては、マーケティングに基づいた戦略策定と実行が特に期待される。今は地域全体で需要を受け入れるための体制や基盤づくりを急いでいるところだろう。
DMOに関連して観光庁が地域の観光振興の取組を支援する事業には、「広域観光周遊ルート形成促進事業」や「観光地域ブランド確立支援事業」、「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」などがある。いずれも観光を前面に打ち出した事業だが、実は「地域資源を・・・」の取組の一つにMICEが含まれている。観光と同様、MICEは地域の交流人口の増加に貢献するものと認識されているからだ。


MICEをマーケティングの視点で効果を最大限に
マーケティング戦略において「客数×客単価」の公式から商品・サービスの売上を最大化する考え方がある。既存利用客を維持しつつ新規開拓も図り、より付加価値の高い商品・サービスをより多く消費してもらう方向性で施策を考えていくことにより、MICEを通じた地域への集客を考える場合でも、この「客数×客単価」の公式にあてはめて考えると集客の切り口を見つけやすいのではないか。
「客数」に関わる要素は、開催件数、開催日数、1件あたりの参加者数である。
MICEは観光と異なり、「主催者」と「参加者」の立場があり、「主催者」が開催地と会期を決める。地域がより多くの「主催者」にMICE開催地として選ばれ、開催件数を増やすには、ターゲットとする「主催者」の設定、「主催者」となる大学・研究機関・企業等のキーパーソンの存在、「主催者」情報や誘致活動体制の整備、などが重要となる。
そしてターゲットとするMICE受け入れには、規模に応じた施設・宿泊施設、開催地へのアクセスの良さが求められる。
「客単価」に関わる要素は消費額である。MICE参加者の「消費額」は滞在日数が長いため、一般の観光客と比べて大きいと考えられる。
参加者の滞在日数は必ずしも会期と一致しないが、全国規模もしくは国際的なMICEであれば県外や海外からの来訪も想定され、なかなか訪問できない地域であれば、参加者が会期前後も開催地に滞在し、滞在日数を増やす可能性も見込まれる。地域内の回遊性を高めるため、事前に参加者へ地域の歴史・文化・観光資源や体験プログラムなど地域の魅力を情報発信することも、より長い滞在につながることになる。
「客単価」では、MICE開催に伴い、地域の魅力ある観光資源をはじめ、開催地でないと入手できない限定商品・受入れサービスの品質などを確保し、参加者に満足してもらえるものをどれだけ提供できるかがカギとなるだろう。


地域のMICEへの取組みをMICE総研が支援
DMOがMICEの誘致や受入環境の整備に直接取り組んだ事例は見受けられない。観光とMICEは両輪をなすとも言われ、地域への集客に貢献し、相乗効果をもたらす。前述のとおり、「客数」と「客単価」の両方の観点から、地域への集客(交流人口の増加)の効果を最大化するための条件や課題にMICEへの取組みを応用することができる。
とはいえ、MICEには「主催者」と「参加者」がおり、ターゲットや開催地に対するニーズや評価基準などは観光とは異なるため、MICEの戦略や推進する具体的施策を検討する際には、観光と分けて考える必要がある。

MICE総研では、自治体や民間企業等からご依頼いただいた調査・分析業務を通じて、MICEに関する市場調査、戦略策定支援、誘致の仕組みづくりやMICE施設開発などの受入環境整備の施策提案等の実績を日々積み上げており、交流人口を増加させる地域創生のサポート役としてこれからも寄与して行きたいと考えている。